爆発する種族
虫の中には自分の身体を爆発させるものがいるという。
それで相手を驚かしたり、攻撃したりして自分たちは生き延びるという寸法だ。
自分たちは、というところがみそで、その個体はおそらく爆発することで死んでしまうが、彼が属する集団は教われずに済むのだ。
個として生きてはいなくて、最終的に集団の利益が守られればよいと考えられなければそういうことにはならない。
個が重んじられている私たち人間からすると「犠牲」や「奉仕」の精神になると思うのだが、彼らにとってはそんな大それた行動指針は関係ない。
元々集団で生きているのだ。
そこに痛みや恐怖があってはいけない。
躊躇するようなこころがあってはいけない。
それでは集団として、種として生き延びることができない。
だからきっと知能を付ける方向に行ってはいけないのだ。
そうするとうまくいかなくなって、全滅してしまう。
もしかするとそんな進化をし、滅びてしまった者たちもいたかもしれない。
私たちはたまたま個を大事にしているが、これは偶然で、個よりも種族全体を大事にするような種族が地球を支配していてもおかしくないのだ。
そもそも私たちは地球を支配していると言っていいのだろうか。
私たちは地球をどうにかする力を持っているかもしれないが、常に生活環境の変化に対して弱さを露呈している。
むしろ虫たちの方が自由に暮らしているではないか。
何も恐れず、好きな場所に住み、種の繁栄のための営みを粛々と続ける彼らの方が地球を我がものにしていると言うに値するでしょう。
とはいえ、そういう風に見えるだけで、彼らは彼らで天敵も多く、意外な苦労話を抱えているのかもしれない。