甘辛ミックスについて
“昨今のファッションが、甘辛ミックスが基本になってから大分経つ。
可愛らしい感じのトップスに、あえてスエットパンツとスニーカーを合わせたり、ふわっふわのフレアースカートにライダースジャケットを羽織ったり。
そんなアイテムのギャップでバランスを取るのが甘辛ミックス。
確かに甘い大福やケーキなんかを食べた後にはおせんべいが食べたくなるし、おせんべいを食べた後には今度はまた別の甘いものを食べたくなって、ああこれはエンドレスだというのは誰しも経験があるに違いない。
だから、ファッションでもその類の現象が起こるのは非常に納得のいく話である。
ちなみに話はそれるが、そんなファッションの「甘辛ミックス」ブームのはるか前から、本家食べ物業界では、甘辛ミックスはとっくに存在していた。
甘いものの後にしょっぱいものが食べたくなるその一連のムーブメント、それを一緒にしてしまったのが本当の甘辛ミックスだ。
非常に分かりやすい所でいえば、まずはチョコ柿の種である。
言うまでもなく柿の種せんべいに、チョコレートコーティングを施したもの。
甘さとしょっぱさが口の中でまさにミックスされる。
それから、王道はざらめせんべいか。
これほどまでにシンプルかつダイレクトな甘辛ミックスはあるまい。
スタンダード・オブ・アマカラである。
最近では、ファストフードのハンバーグ入りマフィンのマフィン生地に、メープルを混ぜたものなんかもあって、甘辛も何だかおしゃれになった、と感動したものだ。
とにかく思い出せないくらいこの世の食べ物には甘辛が存在している。
それほどまでに、人間の心を捉えて離さない甘辛ミックス。
本当はファッション業界でも、甘辛ミックススタイリングなんてのは別にもともとめずらしいものでもなんでもない。
ただたんに、対極の要素を持つアイテムを掛け合わせて、ギャップで魅せるという一スタイリングに過ぎない。
でもこの一般に広まった「甘辛ミックス」のすごさというのは、この言葉自体を分かりやすくファッションに適用させたことだと思う。
誰にでも伝わりやすい、誰でも思い浮かべられるこの食べ物の言葉を通して、人々に概念を広めるということ。
そこはプレスのすごさだなと思う。
言葉でブームを牽引していくのだから。
まあともあれ、どの世界においても、人は甘いものとしょっぱいもので、バランスをとりながら生きているということである。